運動のコントロール その3

私達が体を動かす時には、
なんのために、どのように運動しようとするか
考えます。
 
動機づけや方法を考える段階が、
運動の一番最初の大まかに考える部分になります。
 
この段階では、様々な脳の構造が複雑に
ネットワークを作っているため、
どこをどのように使っているかなどは、
なかなか具体的には分かっていないようですが、
脳のどの部位が損傷すると、動きや運動を妨げるどんな症状が出るのか
ということはいろいろと分かって来ているようです。
 
それぞれ、下記の部分が損傷すると
 
<小脳>
運動の大きさや距離といった空間的な調整が不正確になったり、
運動のタイミングなどの時間的な調整が出来なくなり、
「千鳥足」などが出る
 
【大脳基底核】
不要な運動を抑える事が出来なくなる
 
例)
<黒質>
体がぶるぶると震えて止まっていれないパーキンソン病の「静止振戦」が出る
<線条体>
勝手に体がくねくねと動いてしまう「ハンチントン舞踏病」が出る
<視床下核>
腕や脚が振り回すように勝手に激しく動いてしまう「バリスム」が出る
 
なんとなく、線条体や視床下核が損傷して出る現象などは、
よく気功の治療中などの時に、
自分で自分の体を治そうと無意識に体が動きだす”自発動向”を連想させます。
何か、脳の機能と関係があるのかもしれませんね。
 
また、他には大脳皮質連合野という部分は、
運動の全体的な大枠を考えたり、状況にあった運動の仕方を選んだりなど
運動のとらえ方、考え方に関係する部分ですが、
多くの脳神経系の部分とつながっているので単純に機能は説明できません。
ただ、部分、部分の実験はいろいろとされているようです。
 
例えば、
「運動前野」という連合野の一部の手に関係する場所に細工をしたサルの実験です。
 
リンゴを置いてその上にガラスを置きます。
(ガラスにはリンゴの場所とは違う位置に穴があります。)
普通のサルは、穴から手を入れて、腕を曲げてリンゴを取れますが、
細工をしたサルは、まっすぐリンゴに手を伸ばし、ガラスに阻まれて取れないそうです。
このように単純ではなく、少し工夫をした運動が出来なくなってしまうのだそうです。
 
脳の研究もだいぶ進んでいるのだなぁ~という印象です。
ただ、この脳の機能が解明されたからといって、
それで動きが最適になるというものでもないと思います。
 
私達の体は、成長して大きくなったり(もちろん横などにも(笑))、
疲労や老化の影響動きづらくなったり、体重が変化して重くなったり、軽くなったり、
トレーニングによって筋肉がついたりなど、変化していきます。
常に同じ状態だとは限りません。
 
体の状態が変化すると、
今まで上手くできていたものが出来なくなったりしてしまうかもしれないので、
絶えず、体を調整しています。
 
フェルデンクライスメソッドやその他のボディーワークなどでよくいう、
自己調整力が働いているのです。
 
運動のメカニズムが解明されても
最終的に上手い下手というのは、この調整力が大事なのだろうなと思います。
 
フェルデンクライスメソッドもそういう所に目を付けて
発展してきているのでしょう。