サイズの法則

サイズの法則とは、アメリカの神経生理学者、エルウッド・ヘンネマン(Elwood Henneman)が提唱したものです。

簡単に言えば、
筋肉が力を発揮する時には、「サイズ」が小さく反応の早いものから順番に動きだすと言うものです。

前回話題にした、遅筋と速筋。
筋肉の性質の違いで説明しましたが、これを制御する運動神経で説明すると

遅筋 → 神経が細い、支配する筋肉が少ない
速筋 → 神経が太い、支配する筋肉が多い

という感じになります。

つまり、速筋の方がサイズが大きく、遅筋の方がサイズが小さくなります。

また、神経が細い分、遅筋の方が閾値と呼ばれる反応点が低く、反応が早い
とも言えます。

筋肉の収縮速度だけで考えると、速筋の方が速く縮みますが、
反応速度で考えると逆になるのです。

体の小さいネズミは、出足が速く
体の大きいゾウは、出足が遅いけど
トップスピードでは、ゾウの方が速いという様なイメージです。
(実際には、ゾウの体の中でも小さい筋肉から徐々に動きだしているのですが)

持久力に富む遅筋の方が動き出しが速く、
瞬発力に富む速筋の方が動き出しが遅いというのは不思議な感じもしますね。

でも、
疲れにくい遅筋が先に動き、
疲れやすい速筋が後から動くと考えれば、
人間の体ってよく出来てるなぁ~~~と思います。

ただし、
この反応には例外もあるようです。

1.筋肉が伸ばされながら力を発揮する場合(エキセントリック収縮時)
2.反動をつけて急激に力を発揮する場合(バリスティック運動時)

の時は、速筋が先に動くようです。

この事を考えるとプライオメトリクストレーニングは、
速筋を鍛えるトレーニングなんだなと思いますね。

フェルデンクライス・メソッドでは、小さくゆっくり動くので、
この筋肉の反応で考えると“遅筋”から動かす事になります。
遅筋は、表面よりは深部に多く安定筋として働くものがほとんどです。

体の動きとしては、安定筋が働いて、その後で動作筋が働いた方が
安全で体が安定して動きます。

ゆっくり小さく動く事は、筋肉の動き出しのバランスを整えて、
人間本来の自然な動きを導き出すのに役立つのではないかと思います。

そういえば、フェルデンクライス・メソッドのティーチャーに

「フェルデンクライス・メソッドと筋力トレーニングは別物だから、フェルデンクライス・メソッドをやっているだけではダメだから筋力トレーニングもしなさい」

と言われた事があります。
その時は、なぜかスクワットのやり方を習ったのですが(^^;)

「遅筋だけじゃなく、時には速筋も鍛える必要もある」
という意味も含んでいたのだろうなと今頃思います。

ちなみに若かりし頃は、こんな理論は知らずにガンガン筋トレをやっていたのですが、
筋肥大しやすいからと下ろす方の動き(エキセントリック収縮)を
トレーニングに取り入れていた人がいて、面白そうだと真似をしていだのですが、
速筋を鍛えて筋肥大をさせるには理にかなっていたんだなと今さらながらに思います。

また、バリスティック運動で言えば、
初動負荷トレーニングなどがこれに当たると思うのですが、
どちらかと言えば、中級者以上向けのトレーニングで、
初心者がいきなりやると体を痛める事があると聞きました。
実際、初動負荷トレーニングをやって腰が痛くなったという人もいたんですが、
これもつまりは、速筋(動作筋)ばかりを鍛えてしまって、
遅筋(安定筋)とのバランスが狂ってしまうからなんでしょうね。

やっぱり、なんでもバランスが大切ですね。

ガンガン筋トレばかりやっている人には、ぜひフェルデンクライス・メソッドを
体験していただきたいなと思います。
最初は、よく分からないと思いますが、感覚がつかめれば、
動きの質が絶対変わると思います。

それと、むやみやたらに表面の筋肉を緊張させて
力が抜けない人!

ぜひオススメです。