身体図式

身体図式(Body schema)という言葉は、神経生理学、心理学、哲学などの分野などで広く用いられている言葉です。
自分の身体の状態を表すためのもので、例えば、身長が170cmで痩せ型、足のサイズが26cmで脚がスラリと長いなどという身体イメージ(body image)とは区別されます。
視覚を使った知覚を元にしている身体イメージとは違い、身体図式は、体性感覚を使った知覚を元にしています。
自分の身体の中で感じている”身体の状態”の事です。
例えば、猫が狭い隙間入っていく時に隙間の大きさを見て入れるかどうか考えたりはしません。感覚で入れるかどうか感じています。同じように私達も狭い隙間に入る時になんとなく入れるな、または無理かなと感じると思います。そういう時に感じている身体の感覚(状態)です。
これは、必ずしも自覚できているわけではないので、意識的には分からないかもしれませんが、無意識に動く時、なんとなく動く時に、この身体図式を元に行動が起きています。
飛んできた物をよける、手を伸ばして物を取る、頭がぶつかりそうになってしゃがむ、ジャンプして障害物を越えるなどといった行動をする時にはこの身体図式が元になっているということです。
これがおかしくなっていると、よけたつもりがぶつかる、手を伸ばしても届かなかった、しゃがんだつもりが頭をぶつける、ジャンプしたけど足がひっかかってしまうなどという事が起こるのだと思います。
また、事故や病気などで手足を失った人が、手足があるように感じる幻影肢なども身体図式が影響しているのだと言われています。
(この幻影肢の現象が身体に起きたので、身体図式という概念が考えだされたとも言われています)

このように私達は無意識下で体性感覚を通して身体を感じているのですが、この身体図式は流動的に変化していきます。つまり、動くたびに送られてくる情報で変わっていきます。
しかもこの情報は、身体だけではなく道具へも拡張されます。
棒を持って床や壁を触った時に手で触った時のように“ザラザラ”した感じや“ツルツル”する感じなどを味わったことはないでしょうか?棒を通して感じる感覚も身体図式に影響を及ぼします。車を運転する時に車のバンパーが壁に触りそうだと感覚として感じたりするのも身体図式が車にまで拡張されているからなのです。

運動能力の向上を考える際、まずは身体図式に目を向けてみるのも1つの方法かもしれません。

こういう事も頭の片隅に置いてフェルデンクライス・メソッドのレッスンをやってみてください。きっとレッスンの効果が向上すると思います。

 

参考:
ソマティック心理学
これがボディワークだ―進化するロルフィング