ソマティクス

ソマティクス(somatics)という言葉は、フェルデンクライス・メソッドのプラクティショナーであり、ハンナ・ソマティクス・エデュケーションの創始者トーマス・ハンナによって提唱されたものです。

トーマス・ハンナは、「人間が外側から、すなわち三人称の観点から観察された時、人間の体(body)という現象が知覚される。しかし、この同じ人間が自らの固有知覚という一人称の観点から観察される時、カテゴリーとして異なる現象、すなわち人間の身体(soma)が知覚される」と述べ、ソマティクスを「一人称の知覚で内側から捉えた“身体(soma)”を探求する分野」と定義しました。

外側から自分の身体を客観的に感じるのか、内側から自分の身体を感覚的に捉えているかの違いがソマティクスなのかそうで無いのかの大きな違いになります。

英語を習い始めた頃などに、一人称、二人称、三人称という言葉を聞いたと思います。
自分からの視点なのか、相手からなのか、他者からなのかというような行動を表現する上での役割、立場などの決め方です。
あなたは自分のからだを認識する際に何人称で感じているでしょう?
背が高い、少し痩せて見えるなどといった周りの人を見るような視点で、自分のからだを捉えていませんか?
それは、外側から捉えられている三人称的な感じ方です。
これは主に見る感覚、視覚を用いて行われます。
そうではなく、身体にある固有感覚(体性感覚)を用いて、自分の感覚を通して、内側から身体を捉えるのが一人称的な感じ方です。

一人称的に身体を捉えるためには、自分自身が主体となって参加しなければいけません。
例えば、マッサージなどを受ける時の様に何も意識せずにされるがまま受けるのは、三人称的な参加の仕方です。
フェルデンクライス・メソッドをはじめとするソマティック・エデュケーション(身体教育)とよばれる身体技法では、受ける側も意識を身体に向けて、身体を感じ、身体の変化に気づき、自らが主体となって参加します。

動かしてもらうことが目的ではなく、動かされる事によって「どのように感じたか」、「どのように変化したか?」というように身体の内側からその動きを観察し、認識していく事が必要になるのです。

プラクティショナーにサポートしてもらう事により、
自分1人では見つけられない、改善出来ないものを変化させていきます。
そのためには受け身ではなく積極的に参加する必要があるのです。
そうする事により、今まで感じていなかった身体の動き、身体の感覚に気づき、よりよい身体の動きや身体のバランスを獲得する事が出来るのです。

そこが、一般的な手技療法とフェルデンクライス・メソッドなどのソマティック・エデュケーションとの違いです。

注)「soma」とは、ギリシャ語で「身体」を意味しますが、英語の「body」とは違い、死体やマネキンなどのイミテーションの意味は含まない、“生きている身体(living body)”とした意味で使われています。

参考:
ソマティック心理学
これがボディワークだ―進化するロルフィング
自己調整力を高めるボディワーク 身体感覚を取り戻す ハンナ・ソマティクス