人が“こうしよう”、“こうしたい”と考えて意図的に行動する時、体を動かすためには、脳から命令が出されます。
脳の運動野と呼ばれる部分から命令が出て、運動神経を通して筋肉へ動きの指示をします。
その運動の結果は、感覚神経を通して脳の体性感覚野へ伝えられてきちんと命令通りに出来たかどうかを確認します。
その情報を踏まえて、また運動の命令が出されます。
これをフィードバック機構と呼び、このフィードバック機構の繰り返しで動きが段々と向上していくのです。(ただし、人間の体は通常、違いを確認して運動を修正するまでに0.2秒の時差があると言われているので、速すぎる動きではフィードバック機構は働きづらいようです。)
この時に結果を確認するために、どういう位置にいるか、どういう動きをしたか、どのくらい力が加わったかを感じる固有感覚の情報がとても重要な役割をするのです。
この情報がないと、運動の結果が正確に分かりません。
送った命令と戻って来た情報の確認は、エフェレンス写(遠心性コピー)と呼ばれる命令情報のコピーを使って行われます。
運動の命令と同時に運動野から事前にエフェレンス写を体性感覚野や小脳などへ渡されます。感覚神経を通して戻って来た情報は、この体性感覚野などに送られたエフェレンス写と比べられる事によって違いを確認しているのです。
テストの採点をする時に解答例を見ながら採点するようなものです。
運動ではなく、静止姿勢を保持する時には中枢神経は固有感覚情報を蓄えているので、持続的に固有感覚の入力をする必要はありません。
つまり、次の年も同じテスト問題を使用したので、解答例を新しく作る必要がなく、今年も同じものを使用出来るという感じです。
動くという事は、テスト問題を多少変更するようなものですね。
フェルデンクライス・メソッドを受けて、軽くなった、楽になったなど、動きの感覚が変わったりするのは、この辺の脳の仕組みも多少関係しているのかなと思います。
また、静止状態では固有感覚情報が蓄えられているという事は、動かない事には固有感覚の新しい情報が来ないということなので、じっとしている人よりもたくさん動いている人の方が固有感覚がよく働くようになるのではないかと思います。
フェルデンクライス・メソッドが”動き”にフォーカスする理由の1つなのかもしれませんね。