学習効果を高めるには?

I hear and forget 耳は忘れ
I see and remember 目はうつろい
I do and understand 行なえば悟る

フェルデンクライスが好んで口にした言葉だそうです。
性悪説で有名な中国の儒家「荀子」の書が元になっているようです。

「荀子」の原文は下記のようなもので、上手く簡潔にまとめたなと感じます。

聞かざるはこれを聞くにしかず
これを聞くはこれを見ずにしかず
これを見るはこれを知るにしかず
これを知るは行なうにしかず
学はこれを行なうに至りて止む
これを行なえば明らかなり
明かなるをこれ聖人と為す
聖人なる者、仁義にもとづき、是非にあたり、言行を等しくして、ごうりをも失わざるは、他の道無し
これを行なうにとどまればなり
故にこれを聞けども見ざれば博しと言えども必ず誤り、これを見れども知らざるは識(し)るといえども必ずくらく、これを知れども行なわざれば敦しといえども必ず困(くる)しむ。
聞かず見ざればすなわちあたるといえども仁に非ず、その道百きょにして百陥(かん)す。

「荀子」儒効篇第八 11 第1節
(全訳漢文大系 第七巻 荀子(上) 集英社刊 198頁-204頁 より引用)
※解釈文は一番下に記載してあります。

フェルデンクライス・メソッドを説明する時に
「まずは体験してみてください」
と言っています。

見ても聞いても理解しても実践した事には及ばないからです。
特にフェルデンクライス・メソッドは動く事が目的ではなく動きを通して感じる”からだの感覚”が重要です。
それは、言葉には表しづらいし、見ただけでは分かりづらいものです。

ボールの投げ方を覚える時に
言葉で教えられ、
見本を見せられ、
実際にやってみます。
やってみると上手く出来ません。(まれにすぐ出来てしまう人がいますが)
何が違うのか考え、また
言葉で教えられ、
見本を見せられ、
違いを考えながら、
またやってみます。
そのくり返しの中で感覚をフィードバックしながら進歩して行きます。

日本の古い考えの料理人などは、
何も教えてくれません。
昔から「技は盗め」と言われます。
私も料理屋で仕事をした時に開口一番
「何も教えないから見て覚えてね」(実際はもう少し厳しい言葉ですが)
と言われました。
何度も失敗して怒られながら少しづつ仕事が出来るようになって行きました。
今、思えば失敗するという経験(実践)を積んで学んでいたのだなと思います。

学習効果を高めるために大事な事は、”違い”を感じる事です。
そこからフィードバックが生まれ変わっていきます。
違いが分からなければ何も進歩しません。

フェルデンクライス・メソッドを体験する時は、
いつもの自分の動きとの違い、
または、動きを変えて違いを比べてみたりしていくと感じやすいと思います。

実践し、違いを感じてみてください。

荀子

 

 

 

 

 

<解釈文>
まだ聞かないのは聞いて知っているのに及ばない。
聞いて知っているのは見て知っているのに及ばない。
見て知っているのは理解して知っているのに及ばない。
理解して知っているのは実践して真に体得するには及ばない。
そこで、学問は実践にまで行き着いて終わるのである。
実践してみれば物事は明らかになる。
このように物事に明らかなのが聖人である。
聖人という者が、仁義を根本とし、善悪の判断を誤らず、言説と行為とを一致させて、ほんの少しの食い違いもないというのは、他の方法があるわけではない。
ただ実践を究極の目標としていくからである。
そこで、聞いただけで実際に見ていなければ、広くいろいろのことを聞き知っていても必ず誤りがあり、実際に見ただけで理解して知っていなければ、いろいろの事を知って覚えていても必ずあいまいであり、理解して知っているだけで実践して体得しなければ、理解が十分であっても必ず行きづまる。
聞きもせず見もしないのでは、まぐれ当たりはあるとしても、それは仁者のすることではなく、そんなやりかたでは百回行なって百回とも失敗するであろう。