ランダムな動作

モーシェ・フェルデンクライスは、機械的な動作の反復を嫌いました。

反復運動ではなく、むしろランダムな動作によって、動きの決定的な進歩がもたらされると言っています。

 

ランダムな動作に基づいて生じた”偶然の事象”によって、新しい動きを覚えていくのです。

 

例えば、

ほとんどの乳児は、自分の関心を惹く何かを目で追い、追いかけます。

あまりにも遠くまで追ったために突然反転してしまった時に寝返りを打つという行為を学習します。

また、時には、自分の足を口に含もうとして座るという行為を学習するのです。

 

意識的にその動作を覚える事はありません。

偶然の積み重ねで、学習していくのです。

立つ、歩くなどの動作の大きな飛躍も、体の準備が整い次第、試行錯誤によって学ぶのです。

トレーニングによる学習ではないのです。

 

ランダムな動作は、飛躍的な動作の発達を導くスイッチなのです。

 

人間の子どもは、他の動物のように生まれてすぐに歩けません。

歩けるようになるには学習する必要があります。

しかも他の動物のように遺伝子に組み込まれた固定配線されたプログラムで学習するのではなく、

試行錯誤によって各人各様のあり方で学習していくのです。

そのため、動物のように歩き方、走り方が同じにはならず、

人それぞれ、個性的なその人独特の歩き方、走り方になるのです。

 

知人や家族が遠くで歩いている時に、顔が見えなくても誰だか分かると思います。

それは、その人それぞれの学習による歩き方のクセがあるからなのです。

 

モーシェは、自分のレッスンをエクササイズとして取り上げられるのを嫌いました。

なぜなら、同じ行為の機械的反復は、本人に悪い習慣を身につけさせると考えたからです。

 

人にはそれぞれの学習の仕方があります。

フェルデンクライスのATMレッスンを行う際は、周りを気にせず自分のペースで、

自分らしい学習を心がけてくださいね。